unlovable
自作小説。主にショートストーリーを書いています。
友人

わたしは、人と手を繋ぐことが出来ない。

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駅、南口の改札から出てすぐのところにある喫茶店。
友人と久しぶりに会い、お茶でもしようということになった。

お互いの近況報告が始まる。

友人は今、在宅でホームページ製作の仕事をしているらしい。
今日は仕事仲間との交流会だったそうだ。
いつも仕事は自宅のため、外出はあまりしない。
そのため、こういう機会はとても大切にしているそうだ。

仕事はかなり忙しいらしく、徹夜も良くあるらしい。
自分の持ってる技術力で仕事をしている彼女がとても羨ましくもあるが、
そんなことは自分にとうてい出来ないなと、心の中でため息をついた。

仕事が楽で本がいつでも読めるからとの理由で、
古本屋さんのバイトをしている自分が少し情けなくなる。
今日もバイト終わりに読みたかった本を1冊お店の棚から抜いて、
お茶でもしようとしていた所だった。

在宅での仕事の厳しさ、難しさ、また仕事に対する姿勢を
真摯に語っている友人には、とても言えない。

わたしは、友人が連れている子供のことに話を移すことにした。
子供は女の子二人で、7才と4才。4才の子とは始めて会う。

長女は話をすることが大好きらしい。
すべてにおいて脈絡のないまま、話の話題は次から次へと展開する。
きっと長女の中には、ちゃんと関連性があるのだろうけど。

例えば、こんな感じ。
「わたしはさっきまで船に乗っていた、すると次はめがねの上に座っていて、
こんどは薄っぺらになっている。それから、お母さんの心の中にいて、
それから、それから、」と話はどこまでも続いていく。
発想に枠がないなー、と感心。続きを楽しみにしながら聞いた。

そして次女はというと、
彼女はずっと押し黙ったまま席に座り、ぬいぐるみと遊んでいる。
友人によると、次女はすごく頑固な性格らしい。

例えば、こんな感じ。
次女はジャンケンが嫌いで、決してしないそうだ。
幼稚園などに通っていると、子供達の間でジャンケンは日常アイテム。
それをしないということは、なかなか滞りがあるらしい。
試しに「ジャーンケン」と次女に振ってみたが、やっぱりダメだった。

友人にしない理由を尋ねてみると、次女は「勝ち負け」を決めるのが嫌いなそうだ。
ジャンケンをするぐらいなら、しないで「負け」でいいらしい。
「へー」と、こちらも感心してしまった。とても、しっかりしている。
友人によれば、融通がきかなくて困ることがとても多いらしいけど。

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わたしたちは喫茶店を出た。
友人が夕食を買いに行くというので、わたしも少し付き合うことにした。

スーパーに向かう道の途中、わたしは次女の手を引いていくことになった。
長女が友人と手を繋ぎたがったからだ。残った次女と、わたしが手を繋ぐ。

次女は初めて会ったわたしとも、特に嫌がる風もなく手を繋いだ。ただ自然に。
彼女の手からは、わたしに対して微塵の不安、疑いのないことが伝わってくる。
逆にわたしの手からは、どんな思いが彼女に伝わっているのだろうか。
彼女の手から伝わる無垢な感情が、わたしをとても不安にさせる。

大きな交差点を渡る。たくさんの人の中を、交差する白線の中を、
わたしは気持ちを丸裸にされたような感覚で歩いていた。

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わたしたちはスーパーの前で別れた。
友人達に振ったわたしの手の中に、小さな手の感触が残っている。

彼女は気付いただろうか。わたしが「一人」だということに。
真っ白なこころの中で、いつも一人泣いている本当のわたしに。


Written day:2006/06/14

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