unlovable
自作小説。主にショートストーリーを書いています。
ナイキショップ

「ナイキショップに寄っていかないか?」
高架鉄道の駅に向かう途中、彼女に聞いてみる。

「ううん、行きたくない」
彼女は立ち止らずに歩き続ける。ナイキショップの横を通り過ぎる。

「どうしてだよ」
「ここの店員は人をバカにしてるから」

以前、僕がナイキのスニーカーが欲しくてこの店に来た時のことを思い出す。
なかなか、どれにしようかが決まらず、何度も何度も試し履きをした。店内を何周もした。
その様子をお店の人は不機嫌そうに眺めていた。トーンダウンした僕らは、結局何も買わずに店を出た。

その時から彼女はこの店に対して、嫌悪感を抱いている。
その時から随分と経っていて店員も変っているだろうが、感情はその時のままの様だ。

「でも、嫌な店員のために行動範囲を小さくするのは何だか嫌だな」
「違うの。このお店には近づかないほうが良い。きっと嫌なことが起きるから」

「何それ?」
「虫の知らせ、っていうのかな」

「何だよ、それ?」
「むかしの人は自然に忠実だった、ってこと」

「わけわかんないし」
「流れに逆らって生きても良いことなんてない、ってこと」

高架鉄道のホームへ続くエスカレーターが、空をふたつに分けている。

「結果がどうかなんて、やってみないと分からない。俺は逆らってみたいし、悪い結果ならそれも見てみたい」
「想像力があるようでないよ。崖から飛び降りればどうなるかなんて、簡単なことじゃない」

「俺は飛び降りてみたいと思うし、その先の人生に何があるのかも見てみたい」
「ないわよ何も」

ホームには随分前に着いていた。何台もの車両が僕らに風を叩きつけていった。
当分、ナイキショップに行くことはないだろう。


Written day:2006/05/17

この記事に対するコメント
小説読ませてもらいました。
これで完結なんですよね?
たったこれだけしかない文章だったのに、
長ったらしくて空っぽの文章なんかとは全く逆の感じがしました。
短いのに奥が深いというのでしょうか。
他にも沢山読んでみたいです。
【2006/05/16 17:03】 URL | サグラ #fKXKFgiw [ 編集]

サグラさんへ、コメントありがとうございます。

サグラさんのコメントは、わたしが小説を書いていく上でのテーマを
すごく理解してもらえた感じがして大変嬉しいです。

ちなみに「ナイキショップ」は、これで完結しています。
今後、彼らが別のシチュエーションで登場するかもしれませんが、
まだ何も考えていません。

サグラさんのコメントに励まされながら、
これからも色々な小説を書いていきたいと思います。

【2006/05/17 19:33】 URL | 真田エイチ #mQop/nM. [ 編集]


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